「羊をめぐる冒険」の翻訳(61)
4 彼女はソルティー?ドッグを飲みながら波の音について語る(1)「手紙を預かってきたんです」と僕は言った。
「私に?」と彼女は言った。
電話はいやに遠く、おまけに混線していたので、必要以上に大きな声でしゃべらねばならず、そのためにお互いのことばから微妙なニュアンスが失われいた。吹ききらしの丘の上でコートの襟を立てながら話しているような具合だった。
「本当は僕はあての手紙なんだけど、なんだかあなたにあてたものじゃないかっていう気がしたんです」
「そんな気がしたのね」
「そうです」と僕は言った。言ってしまってから、自分がすごく馬鹿気たことをやっているような気になった。
しばらく彼女は黙っていた。そのあいだに混線は止んだ。
「あなたと鼠のあいだにどんな事情があるのか僕にはわからない。でも僕は彼にあなたに会ってほしいと頼まれたから、電話してるんです。それに手紙だったあなたに読んでもらった方が良いと思う」
「そのためにわざわざ東京からここまで来たの?」
「そういうことです」
彼女は咳払いしてから、ごめんなさいと言った。「友だちだから?」
「だと思います」
たしかに彼女の言うことの方が筋がとおっていた。
「わかりません」と僕は正直に言った。
「私にだってわからないわ。もういろんなことは終わっちゃったんでしょ?それともまだ終ってないの?」
僕にもそれはわからなかった。わからない、と僕は言った。僕はホテルのベッドに横になって受話器を待ったまま天井を眺めていた。海の底に寝転んで魚の影を数えているみたいな気分だった。いったい何匹数え終わったになるのか見当もつかなかった。
「あの人がどこかに消えちゃったのが五年前、私はその時二十七だったわ」とても穏やかな声だったけれど、まるで井戸の底から響いてくるように聞こえた。「五年たてばいろんなことはすっかり変っちゃうのよ」
「ええ」と僕は言った。
「本当は何も変ってないとしても、そういう風には思えないのよ。思いたくないのね。そう思っちゃうと、もうどこにも行けないのよ。だから自分ではすっかり変っちゃったんだと思うようにしてるの」
「わかるような気はします」と僕は言った。
我々はそのまま少しのあいだ黙っていた。先に口を開いたのは彼女の方だった。
「最後に彼と会ったのはいつ?」
「五年前の春、彼が姿を消す少し前ですね」
「彼はあなたに何か言った?つまり街を出る理由とか……」
「いいえ」と僕は言った。
「黙って消えちゃったのね?」
「そういうことです」
「その時、どんな気がした?」
「黙って消えちゃったことについてですか?」
「そう」
“这里有你的信。”我说。
“是给我的吗?”她说。
电话太遥远了,再加上串线,所以必须要大声地说,因此就失掉了相互之间微妙的语感。就像在风吹雨打的山丘上把大衣领竖起来说话那个场景似的。
“本来是给我的信,但感觉是不是给你的信呢?”
“你有这种想法吗?”
“是的。”我说。说完之后我就感觉到我在做一件很蠢的事。
她稍微停顿了一会儿。这时那个电话串线也停止了。
“你和老鼠之间有什么事情我就不清楚了。他希望我和你见面,所以才打电话了。为此还是请你读一读信为好。”
“为此特意从东京来到这里吗?”
“是的。”
她咳嗽之后,说了声对不起。“因为是朋友?”
“是这样的。”
“为什么不直接给我写信呢?”
她说的也的确在理。
“我弄不明白。”我就直接地说。
“我也不明白。我们之间的关系都已经结束了吧?还有什么没有结束的吗?”
这个我也不明白。就说了一声:不明白。我躺在宾馆的床上手里拿着话筒看着屋顶。就像是躺在海底在数着鱼那样。到底能数多少条鱼才能结束呢?
“那个人消失到什么地方那是五年前的事了,那时我已经二十七岁了。”那声音非常平稳,听起来就像是从井底传上来那样。“都已经过五年了,所有的事情都已经改变了。”
“是的。”我说。
“即便是什么也没有改变,但已不想那些事了。也不再想那些事了。若真那样想的话,我那里也不会去的。但是自己已经完全变了。”
“这个我已经明白。”我说。
就这样我们稍微停顿了一会儿。然后首先开口说话的是她。
“你最后和他见面是在什么时候?”
“五年前的春天,离他消失之前很近的时间。”
“他和你说了些什么呢?比如离开那里的理由什么的。”
“没有说。”我说。
“什么也不说就结束了吗?”
“是这样的。”
“当时是什么样的气氛?”
“你是说那种默默地悄悄地消失了?”
“是的。”
主人公能代表老鼠和这位女人见面吗?
过年了,学习也休息几天。